トレーニング 基礎知識

エクササイズをしても1日8時間座ることは なんらかの原因による死亡リスクを顕著に増やす

もし皆さんが、たいていの人と同じなら、オフィスや通勤、テレビを見ながら…座った状態で1日の大半を過ごしているだろう。ある研究1は平均的なアメリカ人は1日9~10時間を座った状態で過ごしていることを明らかにしている。

電話オペレーターのような特定の職種では、1日平均12時間座った状態でいる。私は明らかに、このグループに属していた。15年もの間、1日12時間以上座っていたのだ。また、職場で座っている時間が長いと、家で座っている時間もまた長くなる傾向がある。ありがたいことに、昨年、このエビデンスが非常に説得力のあるものになったので、私は座る時間を基本的に95%減らしたのだ。私は1時間に6回程度、数分間立ち上がるだけでは、私の背中の痛みはなくならなかったが、座るのをやめることで痛みは完璧になくなった。

週末でさえ、平均的な人たちは8時間座っている。このことは皆さんが思うよりも問題である。なぜなら、人間の体は1日を通して、多かれ少なかれ動きを持続するようにデザインされているからである。

私は昨年より前には、このことに気が付いていなかった。しかし、エビデンスは長時間座っていることは、皆さんがとても健康であっても、肥満や2型糖尿病を含む多くの生活習慣病をすすめる原因となることを明らかにしている。身体的に健康な人々は座りっぱなしでいることを回避できるように思えるのに、実際そうでないことは驚きである。
しかしながら、研究は定期的なエクササイズを続けることでは、エクササイズの間で8~12時間座っていることにより蓄積された害に対抗することはできないことを明らかにしている。これは、座る時間をできるだけ減らすことを真剣に考えるための非常に強いエビデンスである。座ることは、新しいタイプの喫煙のようなものである。なぜなら、それは50%以上も肺がんの割合を増やすのだ。座ることが受動喫煙よりも危険であるなどと、誰が知っていたであろうか。

分析による結論:エクササイズをしていても座ることは害になる

非常に説得力のあるエビデンスがある。もし正しい食事を摂り、定期的にエクササイズをして、非常に健康であっても(プロやオリンピックレベルのアスリートであっても)、長時間座っていると、疾患は死亡リスクを独自に上げ始めるというのだ。

最新の系統的レビュー2.3は、47の座りがちな行動に対する研究を調査し、日々、人が座って過ごす時間は、エクササイズから得られる良い成果を台無しにしてしまう害を生み出すことを発見した。座ることは実際、2型糖尿病や心疾患、がんや全死因死亡などからの全ての健康問題による死亡リスクを高めることが分かった。例えば、1日8時間以上座っていることは、2型糖尿病のリスクを90%増加させることに関連している。

ほかの研究4は、ほとんどの時間座る人は、ほとんど座らない人と比較して、糖尿病に関連するリスクが112%上昇する。また、心血管系イベントの関連リスクは147%増加することを明らかにした。全死因死亡率はまた、50%増加する。事実、常に座っていることは喫煙と似た死亡率を持つ5。また、エクササイズをしないと座っていることの害をより受けることとなる。

長時間座ることによる害に対抗するために、下記レビュー6の著者たちは推奨する:
毎日どれくらい座っているか記録すること。また、その時間を毎週少しずつ減らすよう
に努力すること。
仕事では立ち机を使うこと。頻繁に立ち上がることは、座り続けるよりもよいが、私は全
く座らないようにすることは、とても望ましいし、より良い代謝効果もあると強く訴えたい。
テレビを見るときは、CMの時間は立つか歩き回ること。

座ることの害に焦点を当てた研究

1月初旬の英国医学会会報(BMJ)に掲載された2部シリーズの記事7のパート1は、現代の座りがちなライフスタイルの危険性を取り上げている。この記事は公共政策が見直され、勤務時間に動くことを増やすことに焦点を当てるように更新されることが必要であることを提案している。この記事は、がんやメンタルヘルスを含む、座ることの多くの健康への影響について語られた2015初開催のアクティブ・ワーキング・サミットでの結果をまとめている。

例えば、サミットでプレゼンされたある研究では、座ることは下記を増やすことが明らかにされた:
・肺がん54%
・子宮がん66%
・結腸がん30%
これらのがんのリスクが増大する理由は、体重の増加やホルモンの変化や代謝機能不全、レプチン機能障害、炎症などのすべてががんを促進する生化学的変化に関連していると考えられているからである。研究はまた、不安やうつのリスクは座って過ごす時間と共に上昇することを明らかにしている。

なぜ座ることは多くの害を引き起こすのか

アリゾナ州立大学とマヨクリニックの肥満戦略共同ディレクターであり“Get Up! Why Your Chair Is Killing You and What You Can Do About It”の著者であるDr.ジェームス・レバインは座っていることが健康へ及ぼす影響を調査することにキャリアの大部分をささげている。彼の調査は長時間座ってから立ち上がると、多くの分子のカスケード反応が起きることを明らかにしている。例えば、立ち上がって90秒以内で、インスリンにより調整される血糖やトリグリセリドやコレステロールを処理する筋組織や細胞組織は活性化される。これらの分子の影響は自体重を動かすだけで簡単に活性化される。これらの細胞のメカニズムはまた、燃料を細胞に運ぶので、もし定期的にされれば、糖尿病や肥満のリスクを劇的に減少させるだろう。つまり、分子レベルで、体は1日中活動的でアクティブであるようにデザインされているのだ。長い間動かないことは、死の準備をする時間であると体に言っているようなものだ。Dr.レバインによれば、私たちは時々休憩する必要があるが、この休憩は活動を中断することであり、その逆ではない!活動的でなく、座ることは生活様式ではないのだ。

“この非常に不自然な座り姿勢は背中や腰に悪いだけでなく、手首や腕、代謝にもよくない。また、これは血流で起きていることと筋肉や組織で起きていることを一体化する基礎の燃料システムのスイッチをオフにする。”と彼は言う。座ることがもたらす結果として、血糖値、血圧、コレステロールや有害な蓄積、全てが増加する。
これらの有害事象の解決策に処方箋薬は必要ない。必要なことは、できるだけ座ることを避け立ち上がることである。もし1時間ずっと座った場合は座りすぎであり、体と健康を維持することに関連する細胞機構はシャットダウンしてしまう。

座らないことは、より健康的なライフスタイルのためのファーストステップ

世界保健機構(WHO)は1週間に少なくとも150分の運動をすることを推奨している。しかし、研究者たちは、多くの人-特に高齢者にとって、これは始めるのには大きすぎる目標であるかもしれないという。

彼らは、できるだけ座ることを避けるだけという、より現実的な方法を推奨する。フィリップ・スパーリング教授と同僚の“Recommendations for Physical Activity in Older Adults(高齢者の運動への提言)"という文献8によると:
“現在、長時間座ることを減らす必要があることは明らかである。また、健康的な大人の心臓メタボリックの危険性の増加を減らすことと同様に、同じく生活習慣病を管理する高強度インターバルトレーニングの可能性に関するエビデンスが証明された。このハードなトレーニングは、一般的に週に3回、さまざまな3~4分の高強度エクササイズに数分の強度の低い回復を組み入れたものである。
これらの点から、有酸素運動のための主な健康上の注意は1回10分もしくはそれ以上の中程度の運動を1週間150分することである。
しかしながら、多くの人、特に高齢者のグループはこのレベルのアクティビティをすることが難しい。私たちは、患者にアドバイスをする際に、医師は推奨されたレベルにこだわるより、小さな活動の総合でアクティビティのレベルを上げるように促すべきであるということを議論している。

この150分の目標は推奨されているものの、ガイドラインの具体的な要素を目立たなくしているかもしれない。これらは、より低強度のライフスタイル活動をする方法を見つけることも含んでいるのだ・・・。”

フィットネストラッカーは役立つツールである

解決法の1つはテクノロジーの使用を見直すことにあるかもしれない。
例えば、テレビは毎日の座って過ごす時間を増やす原因となる。そこで、この座っている時間を何かもっとアクティブなことに変えることを考えなければいけない。これはすべてのテクノロジーが有害であるということを意味しているわけではない9。

例えば、私は身に着けることのできるフィットネストラッカーに非常にワクワクしている。これは皆さんのアクティビティレベルを測り、どれだけ長く、よく眠れているかを記録することができる。もし記録をしていなければ、習慣を変えることは難しい。また、このような装置は長年の習慣を修正し、もっと多く歩いたり、早くベッドに入り8時間の睡眠をとったりする手助けとなる。もし、まだフィットネストラッカーを持っていなければ、1つ持つことをおすすめする。今年の暮れにリリースされるJawbone’s Up33は今までで最も進んだフィットネストラッカーになるだろう。しかし、これからより進んだものがもっと発売されるだろう。

また、今年に発売されるアップルウォッチ11も1つの例である。私はこれらの多くをチェックし、幅広い健康データを提供する一連の最先端のセンサーを搭載するJawboneはベストだと思う。私は皆さんのエクササイズに加えて1日7000~10000歩を目指すこと、また毎晩8時間の睡眠を目指すことをおすすめする。フィットネストラッカーでこれらのことや、それ以上のことを記録できる。
私は、これを使う前は、おそらく1日2000歩程度だったが、今では1日約15000歩、約8マイルにもなった。歩いている間にKindleを読むこともでき、週に1冊読むことができるようになった。

座っていなければいけない場合は姿勢に気をつける
座ることを減らすようにしても、多くの人たちの生活の中で座らなければいけないこともある。そうすると疑問がわいてくる。座ることに関連するリスクをどうすれば低減できるのか?

姿勢に気をつけることは1つの方法である。最近のCNNの記事12では“賢く座る”ことを進めている。ヨガの姿勢を組み入れて、呼吸に気をつけ、ヨガをベースにした5ポイントの姿勢チェックでより健康的に座ることができる。また、動いたりシフトする体のシグナルに慣れさせる。
“姿勢のカリスマ”エスター・ゴーカレのアドバイスに従うことは、長時間座っているために起きる姿勢に関係する痛みの改善に非常に効果がある。また、座っていることの最悪のリスクを改善する可能性もある。

健康的な座り方の基本は下記を参照にして欲しい:

スタックシッティング:

脊椎の骨をきれいに並んだ状態にし、骨に沿った筋肉をリラックスさせるためには、お尻を後ろにつきだすような感じ(極端にしない)で座る。これで、息を吸ったり吐いたりするとき、自動的に脊椎が伸び安定する。この静かな動きは血液の循環を刺激し、座っている間でさえも自然治癒力を持続させる。

伝統的なアドバイスでは、骨盤を引っ込め、S字形の脊椎を維持するように言われるが、エスターはJ形の脊椎はより自然であることを明らかにした。J形は背中がまっすぐで腰部が比較的フラット、お尻が少し突き出ている姿勢である。骨盤を引っ込めることで、内臓を押しつぶしている骨盤腔の量を3分の1減らすことができる。

ストレッチシッティング:

脊椎を伸ばすほかの方法は、バックレストを引っ張る装置として使うことである。下のムービーのデモンストレーションを見ていただける。タオルかこの目的のためにデザインされたクッションが必要である。この単純な動作は脊椎を伸ばし、背もたれに寄りかからないようにする。この姿勢は脊椎を伸ばすことを助ける。また、椎間板をけん引することで、水分を補給し椎骨の間で神経が衝突するのを避ける。

これはまた、腰部を平らにするのを助け、坐骨神経の痛みがある場合は、この痛みを和らげる可能性もある。ただし、この座り方はほかに方法がない場合の最終手段であることを覚えていてほしい。座るよりも立っていることのほうがよりよいのであるから。慣れるまでには少し時間がかかるかもしれないが、慣れてしまえば楽になる。

1日のルーティーンにウォーキングを取り入れる

この段階で、もし定期的に運動をしていたとしても、長時間座ることは、多くの生活習慣病を促進し寿命を縮めることについて、非常にたくさんの研究やエビデンスがある。
先に、座っていることによる悪影響に対抗するために、10~15分ごとに立ち上がりデスクで運動をすることをすすめたが、Dr.レバインの本を読んで、もし本当に健康を求めるのならば、それだけでは不十分であると確信した。私は答えはできるだけ立ち上がることであると考える。

とはいえ、私は職場の方針やほかの要因により制限される人もいると気づいた。また、座ることを完全にしないというのは非常に高いゴールである。そのため、まずは単純に1日をどう過ごしているかをよく考え、立つ時間やよりこまめに動く方法を見つけることをおすすめする。

覚えておいてほしい。一般的なルールとして、もし1時間座りっぱなしであれば、それは座りすぎである。1時間に50分以上座りっぱなしでいることは避けるべきである。私は高強度トレーニング、1日7000~10000歩を歩くような非運動活動やできるだけ座らないことは健康を増進するのに理想的なコンビネーションであると考える。また、日常のフィットネスプログラムにウォーキングを付け加えることをおすすめする。一方で、もしエクササイズをまだしていないのであれば、ウォーキングはこれから始めるのに最適である。

まずはイスから立ち上がることが健康的なライフスタイルに近づくための第一歩である。非運動活動のような低レベルに慣れることで、より積極的にエクササイズを始めるのに十分なモチベーションを得ることができるのだ。

1 BMJ January 21, 2015
2 Ann Intern Med. 2015;162(2):123-132
3 CNN January 21, 2015
4 See BMJ January 21, 2015
5 Diabetologia. 2012 Nov;55(11):2895-905
6 See Ann Intern Med. 2015;162(2):123-132
7 See BMJ January 21, 2015
8 BMJ 2015;350:h100
9 The Verge January 22, 2015
10 The Verge November 5, 2014
11 Mashable September 11, 2014
12 CNN January 25, 2015

*注)これらの健康情報および教育メッセージは、チョイス ニュートリションによって翻訳されています。記事の掲載目的は健康、栄養、トレーニングなどに関する情報の提供と共有にあり、個人の健康状態にアドバイスを与えるためのものではございません。食事法、トレーニング法、その他の健康管理法につきましてはそれぞれの責任において実行されますことをお願い申し上げます。また、体に違和感や不調があるときには医療機関へのご相談をおすすめいたします。なお、記事の内容に関するお問合せにはお応えしておりませんのでご了承ください。