事実、エクササイズが健康を改善することについてはすべての人が賛成するだろう。しかし、それらの作用を実際に生み出すメカニズムは徐々に明らかにされているところである。フィットネスの研究は大きな進歩を遂げており、現代の科学は健康を改善するために、どのようにエクササイズが体に影響を与えているかを説明するための多くの興味深い所見を述べている。
遺伝子発現(いくつかの遺伝子の活性化やほかの遺伝子の不活性化)に影響するそれ自身の能力に答えの一部がある。
以前のニューヨークタイムスの記事1は、プロントページで最新の研究を掘り下げた:
“ヒトゲノムは驚くほど複雑でダイナミックであり、遺伝子は体から受け取る生化学的シグナルに応じて常にオン/オフされる。遺伝子がオンになると、体のいたるところで生理反応を刺激するたんぱく質を発現させる。”
エクササイズのエピジェネティクス(後成的遺伝)
“変えられないこと”ではなく、遺伝子発現は遺伝子外の影響により変更され得る。この影響は遺伝子の作用を変えるが、DNAのブループリント自体には影響しない。この過程は“エピジェネティクス(後成的遺伝)”として知られ、主にメチル化によって生じる。
記事によると:
“メチル化では、メチル基と呼ばれる原子集団が微小の軟体動物のような遺伝子の外側に付着し、その遺伝子が体からの生化学的シグナルを受け取り反応できるようにする”
メチル化パターンは食事やエクササイズのような様々な生活様式の変化により変化し得る。毒物暴露はまた、たんぱく質のタイプを変え、特定の遺伝子が発現することにより、遺伝子発現に影響する傾向がある。
このように、あなたの環境、食生活や一般的なライフスタイルは、病気の進行や健康状態に重要な役割を果たすエクササイズに関しては、先行研究では、エクササイズが筋細胞の遺伝子パターンのメチル化に急激な変化をもたらすことが明らかにされている。
2012年のジャーナルCell Metabolism2に掲載された研究は、筋肉の基本的な遺伝子コードは変わらないものの、激しいエクササイズ-たとえ短くても-は筋肉のDNA分子の構造的、化学的変化を引き起こすことを明らかにした。
この遺伝子活性化は筋肉の収縮によって誘発され、この-遺伝子活性化を誘発した-収縮はエクササイズの構造や代謝作用、強度のための筋肉の遺伝子の再プログラミングにつながる一連の活動の一部であると思われる。
急な運動により影響を受けるいくつかの遺伝子は脂肪代謝に関わる。
具体的に、この研究は、エクササイズ時に、体はほぼすぐに脂肪を分解するたんぱく質の生成を増加させる遺伝子の活性化を行うことを示唆する。
以前の研究はまた、エクササイズ中に起こる様々な生化学的変化の特定や計測を行った。血糖を安定させるのを助ける化合物を含む20以上もの異なる代謝産物3が影響を受けた。これらすべての生化学的変化は正のフィードバックループを形成し、健康度や身体能力の改善をもたらす。
持久系トレーニングはどのように遺伝子に影響するのか
これらの研究結果はほかの疑問を生み出す:持久系トレーニング(短い高強度トレーニングとは反対の)はまたメチル化に影響を与えるのか、もしそうならどのように? 2014年12月に発表されたスウェーデンの研究4はこの質問を解明しようとしたものである。記事によると:
“ストックホルムのカロリンスカ研究所の科学者たちは23名の若くて健康な男性と女性を募り、彼らに筋生研を含む一連の身体能力や医学的検査を行った。それから3か月間、下半身の半分をエクササイズさせた。過去の、後成的変化を正確に研究することにおける障害の1つは、私たちの生活の様々な側面が私たちのメチル化パターンに影響を与えていることであり、そのことが食生活やほかの行動からの影響とエクササイズの効果を分けることを難しくしている。
カロリンスカの科学者たちは、参加者たちに1本の脚のみ自転車を使い、ほかの脚は運動をしない状況下におくという単純な方法によって、この障害を覆した。実際、各自が各自の対照群となったのだ。両脚が各自の生活に影響されたメチル化パターンを受ける;しかし、ペダルをこぐ脚だけはエクササイズに関連した変化を表すのだ。”
被験者たちは1本脚のペダルエクササイズを3か月間の間、1週間に4回45分間の中程度で行った。結果は? 運動した脚は運動していない脚より強度が増した。エクササイズは期待通り、身体状態を改善することが確認された。筋肉の細胞内の遺伝子変化は明らかとなった。しかし、話はそれだけでは終わらなかった
運動した脚から生検された筋細胞のゲノムの5000以上の部位はメチル化パターンは変化していた。これらの変化は運動していない脚から生検された細胞では見られなかった。運動した脚で起こった主なメチル化の変化は以下の役割を果たす:
エネルギー代謝
インスリン反応
筋肉の炎症
持久系トレーニング vs 高強度エクササイズ
かなり明確に、エクササイズ(あらゆる形態の)はプラスの作用を持つ。エクササイズは体全体、また全体的な健康状態に影響するパワーを持つ。
インスリン耐性はほとんどの慢性疾患の要因であるため、インスリン反応(インスリン受容体感受性を最適化することでグルコースやインスリンレベルを正常化する)へのエクササイズの有益な影響は、エクササイズの最も重要な作用である。
筆頭著者であるマレン・リンドホルムによると:5
“持久系トレーニング-多くの人が簡単にトライでき、費用もかからない生活様式の変化-を通して、私たちがどのように遺伝子を利用するか、それを通して、どのように生活の質を向上する、より健康的で機能的な筋肉を得るかに影響する変化を起こさせることができる。”
高強度インターバルトレーニング(HIIT)は、持久系トレーニングと比較するとよりポジティブな効果を持つことが明らかにされている。また、上記の研究は持久系トレーニングは確かに良い健康状態を作り出す遺伝子変化を誘発するものの、HIITはより効果的であると結論付けた。
多くの研究は、トレッドミルでのジョギングのような持久系エクササイズに焦点を当てているため、あなたは多くのエクササイズが持つより深い利点を見過ごしていることを示している。
最近、マイオカイン-細胞群-筋線維により生成されるシグナル伝達たんぱく質-やそれらがどのようにメタボリックシンドロームやがんのような病気と闘うのかに関連する高強度トレーニングに関するいくつかの研究がある。
私は昨年、この研究に関してDr.ダフ・マガフにインタビューをした。
これらのマイオカイン-筋肉で産出されるサイトカイン-は非常に抗炎症性である。それらはまた、筋肉内のインスリン感受性やグルコース利用を高める。“スーパースロー筋力トレーニング”としても知られる高強度筋力トレーニングはマイトカインを活性化する観点からは、最も効果的であると思われる。この理由は、急速で深いレベルの筋疲労を誘発するからである。これは筋収縮を高め、より多くのマイオカインを分泌する。
もしみなさんがまだフィットネスプランに高強度トレーニングを組み込んでいないのならば、すぐに始めることを強くおすすめする。ここでHIITに関する情報を得ることができ6、様々な異なるプログラムから選ぶことができる。私はまた、スーパースローとスーパー・スーパースローストレングストレーニングの手法の類似点と相違点について以前の記事で書いている。7
エクササイズの多くの生物学的効果
一般的なエクササイズの効果に戻ろう。多くの生化学的効果はトレーニングをすると起きる。これは以下に関する変化に関連する:
・筋肉-収縮や運動にグルコースとATPを使う。ATP生成を増大するために、体は余分な酸素を必要とする。そのため呼吸が増え、心臓は筋肉により血液を送るためにパンプする。十分な酸素がないと、代わりに乳酸が生成される。筋肉の小さな損傷が修復される過程で、筋肉はより大きく強く成長する。
・肺-筋肉がより酸素を必要とすると(安静時の約15倍の酸素量)、呼吸数は増加する。いったん、肺を取り囲む筋肉がこれ以上速く動けない状態になると、VO2max(最大酸素摂取量)と呼ばれる状態に達する。VO2maxが高いほど健康であるといえる。
・心臓-すでに述べたように、筋肉へより多くの酸素を供給するため、身体的活動とともに心拍数は増加する。健康であれば、より長く強度の高いワークアウトができるため、より効率的に心臓はこの活動ができる。さらに、この効率性の高まりはまた、安静時の心拍数を減らす。また、新しい血管形成の結果として、血圧が下がる。
- 関節と骨-エクササイズは関節や骨に体重の5~6倍の重さをかける。大人になると最大骨量に達し、その後ゆっくりと減少し始める。しかしエクササイズは、健康的な骨量の維持をサポートする。加齢により骨は密度が減りもろくなる(特に活動的でない人は)が、体重負荷運動は実際のところ、骨がスカスカでやわらかくなる骨粗しょう症の最も効果的な治療の1つである。
エクササイズは脳の最適な健康維持にとっても重要である
多くの研究はまた、エクササイズがほかの体の部分と同様に脳の機能にとっても重要であることを明らかにしている。実際、エクササイズは、かなりの高齢まで“明晰な頭脳”でい続けるために不可欠である。まず第一に、血流が増大すると、ほとんど即時に脳の機能が高まる。結果として、ワークアウト後により集中力が高まるように感じられるだろう。さらに重要なことには、定期的なエクササイズは新しい脳細胞を生じさせる。海馬では、これらの新しい脳細胞が記憶や学習を高めるサポートをする。8 またこれは、加齢により起こり得る認知力の低下を防ぐ脳の灰白質や白質の両方を保護するサポートをする。9.10
遺伝子変化はまた、ここでも起きる。血流の増加は異なる遺伝子をオンやオフにすることに脳を適応させる。また、これらの多くの変化はアルツハイマーやパーキンソンのような病気を防ぐ。エンドルフィン、セロトニン、ドーパミン、グルタミンやGABAのような多くの神経伝達物質もまた誘発される。これらのいくつかは感情をコントロールする役割がよく知られている。当然のことながら、エクササイズはうつのための最も効果的な治療や予防の1つである。
エクササイズが生み出す脳内でのこれらの効果的な変化によるメカニズムの3つは:
・脳由来神経栄養因子(BDNF)の増加
エクササイズは、若返りの作用を持つBDNFの生成を次々に刺激するFNDC5と呼ばれるたんぱく質の生成を刺激する。脳内では、効果的に脳の成長を増大させる新しいニューロンに変換するために12、BDNFは存在する脳細胞を保護し11、脳の幹細胞を活性化させる。
BMPの低下やノギンの増加
骨形成たんぱく質(BMP)は、新しいニューロンの生成を遅くする。そのためニューロン新生が減少する。もし、BPMのレベルが高ければ、脳の成長は遅くなり回転が鈍る。エクササイズはBMPの影響を減らし、成体幹細胞は脳の活動性を保つ生体機能の活動をつづけることができる。動物実験では13.14、回し車で運動したマウスはたった1週間で脳のBPMを半分に減らした。
さらに、それらはまた、ノギンと呼ばれるたんぱく質が目立って増加した。これはBMPのアンタゴニストとして作用する。そのため、エクササイズはBPMの有害作用を減らすだけでなく、より有益なノギンの増加を刺激する。このBPMとノギンの複雑な相互作用また、ニューロンの増殖や若さを促進するほかのパワフルな要因でもあると思われる。
・プラーク形成の減少
脳内に存在するたんぱく質にダメージを与える方法を変えることにより、エクササイズはアルツハイマー病の進行を遅くする可能性がある。15
エクササイズはほかの健康的なライフスタイル変化をより高める
食事は健康的なライフスタイルから得ることのできる健康的な利点の約80%を占めるが、エクササイズはこれらの利点をパワーアップする根本的な“活用因子”である。早期に始めて続ければ、長期的な素晴らしい利益を得ることができるが、いつ始めるにせよ遅すぎるということはない。シニアでも、適切なエクササイズプログラムを始めることで、身体的な機能は言うまでもなく、身体的、精神的な健康を改善することができる。
ストレングストレーニングは特に年配の人にとって重要であり、スーパースローストレッチトレーニングは、ほかの方法と比べてより安全で効果的だろう。全体的に、高強度インターバルトレーニングはエクササイズの健康効果を最大限に高めると私は信じる。同時に最も効果的で時間がかからない。そうは言っても、みなさんは理想的に幅広い種類のエクササイズを組み合わせた包括的なさまざまなフィットネスプログラムにチャレンジしたいだろう。
私はまた、できる限り座ることを避け、毎日歩くことを増やすようにするのを強くおすすめする。これにはフィットネストラッカーが非常に役立つ。日常的なフィットネスプログラムに加えて、1日7000から10000歩を歩くようにすることもおすすめだ。
研究は長時間座った状態でいることは、生活習慣病の独立危険因子であり、あらゆる原因による死亡リスクを高めるとこを明らかにしている。もっと立ち上がり、運動とは別にできるだけ動くことを増やすことは、日常的なフィットネスプログラムを行うのと同じくらい健康維持に重要である。
*注)これらの健康情報および教育メッセージは、チョイス ニュートリションによって翻訳されています。記事の掲載目的は健康、栄養、 トレーニングなどに関する情報の提供と共有にあり、 個人の健康状態にアドバイスを与えるためのものではございません 。食事法、トレーニング法、 その他の健康管理法につきましてはそれぞれの責任において実行さ れますことをお願い申し上げます。また、 体に違和感や不調があるときには医療機関へのご相談をおすすめい たします。なお、 記事の内容に関するお問合せにはお応えしておりませんのでご了承 ください。