毎日少しのあいだ、あるいは週に数日だけ自分を「飢えさせる」ことはよいアイデアだと思いますか?数多くの証拠が、断続的(途中で休みながら続ける)に絶食することは健康や長寿に非常に有効であると示しています。
私の考えでは、あなたが体重やその他の健康問題で悩んでいるなら、絶食がもっとも有効な方法だとお勧めします。その理由は、絶食することによって、体が砂糖や炭水化物を燃やす状態から、体脂肪を主な燃料として燃やす状態に変化するからです。
以前の記事で話したように、断続的に絶食をすることは、絶食後にドカ食いをしてしまったり、あるいは極端なやり方をするダイエットなどとは違います。ここで紹介するのは、食事をする時間帯を決めることによって、定期的に絶食を行うことです。
私は個人的には、断続的に絶食をするのが好みですが、週に数日だけ絶食するのでも、1日おきに絶食するというのでも構いません。いろいろなやり方があるのです。
効果を上げるためには、例えば毎日断続的に絶食をする場合、1日の絶食時間は最低16時間が必要です。これは例えば、ものを食べるのを朝11時から夜7時までに限るのです。基本的に、これは単に朝食を抜いて、昼食を1日の最初の食事にするのと同じことです。
もう少し厳しくするなら、食事をする時間枠を6時間、4時間、できるなら2時間まで狭めても構いません。しかし、食べる時間枠を1日のうち8時間の枠内に限るという方法によって、実に多くの効果をあげることができるのです。というのも、体が貯蔵されたグリコーゲンを代謝するのには6時間から8時間かかり、その後はじめて体脂肪を燃やすモードに移行するからです。それなのに、毎8時間ごとに(あるいはそれより早く)食べることによってグリコーゲンを取り込んでしまうと、体が蓄積された脂肪を燃料として燃やすのは困難になります。
断続的な絶食―ダイエットというよりはライフスタイル
私は2年間、何種類かの食事スケジュールを試してみた結果、現在は6~7時間の範囲の間で食べるようにしています。
この、食事ができる時間を限定する断続的な絶食法では特に食べる量に制限はないものの、絶食時間以外にジャンクフードを好きなだけ食べるなどは、当然ながらいけません。それでは全くの逆効果です。2012年に発表された、マウスによる研究では、断続的な絶食の合間に過食をすると、死亡率を下げることもなく、前立腺がんの成長を遅らせることもありませんでした。絶食していない時に大食いすることは、せっかくの絶食による健康的な効果が簡単に失われてしまうのです。では、ポイントとなるのは何でしょうか?
私は、絶食をするのはダイエットではなく、ライフスタイルだと考えています。そして、そのライフスタイルには正しく健康的な食べ物を選ぶことも含まれます。また、絶食期間中には正しい栄養をとるのが特に重要になるため、絶食を試す前には自分が適切な食べ物を選んでいるか確かめてみるべきでしょう。
適切な食べ物とは、炭水化物を最小限にして、その代わりに健康な脂肪、例えばココナツオイルやオリーブイル、オリーブ、バター(無塩)、卵、アボガドやナッツなどに置き換えるなどです。体が脂肪燃焼モードになるには通常数週間かかりますが、いったん体が慣れてしまえば、不健康な食べ物や炭水化物を食べたいという欲求は自然に消えてなくなります。なぜならば、体は蓄積された脂肪を燃やすことができるようになり、即効性のある炭水化物に燃料を頼る必要がなくなるからです。しかし残念なことに、山のようにエビデンスがあるにもかかわらず、多くの医療従事者は患者に絶食を勧めることに積極的ではありません。
「Eat Stop Eat」の著者、ブラッド・パイロンは以下のように述べています;
「全国の医療従事者は、悪いイメージを恐れるあまり、患者に絶食を勧めない。我々はジムへ行くことは自信を持って勧める。もし、私が言うことがジムに通って健康的な食事をするというだけであれば、誰もそれに文句は言わないだろう。しかし我々が、食事を減らすことだけでなく週に1回か2回、24時間何も食べないことを勧めた瞬間、異説扱いをされてしまうのだ。」
断続的な絶食の健康上の効果
甘いものやスナックを食べたいという欲求を退けて、もっと効率的に脂肪を燃やす体にすると、より簡単に健康的な体重をキープすることができます。また、現在の科学では断続的な絶食が健康に効果的であるはっきりした理由を他にも多く確認しています。
例えば、2011年にニューオーリンズで開催されたアメリカ心臓病学会の年次集会での発表によると、絶食によって女性には1300%の成長ホルモン(HGH)の上昇が見られ、男性には驚くことに2000%の上昇が見られました。
HGH、ヒト成長ホルモンは、一般的に「フィットネス・ホルモン」とも呼ばれます。それは、健康とフィットネスそして長寿を保つのに重要な役割を持っており、筋肉成長を助け、代謝機能をアップさせることで脂肪を減らすのに大いに役立ちます。絶食することが、筋肉を生成して同時に体脂肪を減らすのに役立つという事実は、なぜHGHが筋肉量を減らすことなく体重を減らすのに役立つかの説明になります。さらに、アスリートですら絶食によって効果を得ることができるのです(オーバートレーニングや栄養管理に十分注意した場合)。この絶食方法の他にHGH(ヒト成長ホルモン)値を劇的に増加させるのに匹敵する唯一のやり方は、高強度のインターバルトレーニングを行うことです。
断続的な絶食による、その他の健康的効果
・最適な健康状態の鍵となる、インスリンおよびレプチン感受性を正常化する。
・「空腹ホルモン」とも呼ばれるグレリン値を正常化する。
・トリグリセリド値を下げる。
・疾患のバイオマーカーを改善する。
・炎症を防ぎ、フリーラジカルによるダメージを軽減する。
・記憶や学習機能を保持する。
断続的な絶食は、継続的なカロリー制限と同等あるいはそれ以上に効果的である
デューク大学医療センターの泌尿器学および病理学の准教授であるスティーブン・フリードランド教授によると、「栄養失調ではない低栄養」状態は、動物の癌において生存率を継続的に向上させ、全体的に寿命を30%までも伸ばす唯一の試験的アプローチです。
また興味深いことに、断続的な絶食は続けて実行するのがさほど難しくない上に、ほぼ理想的な健康上の恩恵をもたらすと考えられるのです。多くの人にとって、毎日食事をとる時間を短い時間枠の間に狭めるだけのことは、1日全体のカロリー量を大幅に減らすことよりずっと簡単です。
アメリカ国立衛生研究所(NIH)の一部門である、アメリカ国立老化研究所の上級治験責任医師のマーク・マットソンは断続的な絶食およびカロリー制限による健康上の効果について研究を行いました。マットソンによると、絶食がなぜ効果的かにはいくつかの見解があります。
「我々が繰り返し研究を重ね試験をデザインしてきたことから、ある仮説が考えられる。細胞は、絶食をすることによって軽いストレス下におかれることになる。そこで細胞はストレスへ対処するための能力や抵抗力を高めることによってストレス、そしておそらくは病気とも対抗するようになるのだ。この、断続的な絶食に対する細胞の反応は、細胞がエクササイズに対して起こす反応と非常によく類似している。」
マットソンの研究の中には、中程度の喘息を持つ肥満の成人は、8週間の間、1日おきにカロリー摂取を80%減らすことにより、体重の8%を落とすことができました。酸化ストレスおよび炎症のマーカーも同様に減少し、喘息に関連した症状も軽減して生活の質(QOL)の指標でもいくつかの改善がみられました。最近では、マットソンおよびその同僚は、断続的な絶食と継続的なカロリー制限が、体重を減らすこととインスリン感受性、およびその他代謝異常による疾病のマーカーにどのような効果を表すかを比較しました。この、2011年に国際肥満ジャーナル(International Journal of Obesity)上で発表された研究によると、断続的な絶食は上記の観点において、継続的にカロリー制限を行うのと同等の効果があり、インスリン抵抗性に関してはカロリー制限よりもわずかに上回る改善が見られました。研究の著者によると;
「両グループともに、レプチン、遊離アンドロゲン指標、高感度C反応性たんぱく質、総コレステロール値およびLDLコレステロール値、トリグセリドおよび血圧に中程度の減少が見られた。また性ホルモン結合グロブリン、IGF結合タンパク1および2は上昇が見られた。空腹時インスリンおよびインスリン抵抗性の減少に関しては、両グループともに中程度であったが、IER(断続的な絶食)のほうがCER(継続的なエネルギー制限)より減少値が大きかった。」
断続的な絶食が脳に与える効果
脳も、断続的な絶食によって効果を得ることができます。記事は以下のように報告しています;
「マットソンはさらに、絶食がニューロンに与える利益についても研究を行った。10時間から16時間のあいだ食事をしなければ、体は蓄積された脂肪をエネルギーとして使うようになる。そして、ケトンと呼ばれる脂肪酸が血流に放出される。これは記憶および学習機能を保護し、同様に脳の疾患の進行をも送らせることが示されている、とマットソンは述べている。」
脂肪を燃やす際の副産物としてケトンを放出することに加え、断続的な絶食は脳由来の神経栄養因子(BDNF)と呼ばれるたんぱく質の生成をも増大させることによって脳の機能に効果を与えます。マットソンの研究は、1日おきの絶食(絶食日のカロリーをおよそ600カロリーに制限する)はBDNFを脳の領域によって、50%から400%の間の値まで増加させると示しています。BDNFは脳の幹細胞を活性化させて新しいニューロンに置き換え、神経系の健康を促進する数多くの化学物質を活性化させます。このたんぱく質はさらに、脳細胞をアルツハイマー病やパーキンソン病などに関連する変化から守ります。
BDNFは神経筋系にも現れ、神経運動が劣化するのを守ります。(この神経運動は筋肉にとってもっとも重要な要素です。この神経運動がなければ、筋肉は点火装置のないエンジンのようなもので、神経運動の劣化は、加齢にともなって筋委縮が進むプロセスの一部なのです。なので、BDNFは筋肉と脳に大きく関わっています。そしてこの相互関係は、身体的なエクササイズがどれほど脳の組織へ良い影響を与えるかの大きな説明になるでしょう。また、断続的な絶食を高強度のエクササイズと組み合わせたものが特に強力な組み合わせになるかの根拠になります。
断続的な絶食をやってみましょう
あなたが断続的な絶食をする準備ができたなら、まずは朝食を抜いてみましょう。就寝の3時間前からは、水以外の摂取は禁止です。そして、食事をする時間は、1日のうち8時間(あるいはそれ以下)の枠内におさめます。その6時間ないし8時間の食べてもよい時間において、摂取するものは健康的なたんぱく質にして、パンやパスタ、イモなどどの炭水化物はできるだけ避けます。その代わりに健康的な脂肪分であるバターや卵、アボガド、ココナツオイルやオリーブオイル、ナッツなどを摂りましょう。実際、メディアやいわゆる「専門家」たちが摂らないように言っている脂肪分です。
これによって体は、炭水化物を燃やす状態から、体脂肪燃焼モードへと変換されていきます。いったん体がこの状態になると、体の砂糖や食べ物全般に対する欲求が正常化します。甘いものやジャンクフードに対する欲望は完全になくなるまではいかなくとも、劇的に減少するでしょう。
ただ覚えておいてほしいのは、体がこの脂肪燃焼モードになるまでには数週間かかるということです。徐々に行わなければいけません。しかし、いったん体がこの脂肪を燃やす状態になれば、1日18時間の絶食時間は楽にこなすことができ、空腹感も感じないでしょう。多くの人々が感じる「空腹感」は、実は糖分への欲求なのです。一度体がうまく脂肪燃焼モードへと移行できれば、それは魔法のように消え去ります。
絶食による他の効果や利益は、腸内の有益なバクテリアが劇的に増えることです。腸内の健康に有益なバクテリアは、数において体の細胞を10倍も上回り、そのバクテリアを改善することは病気や風邪、インフルエンザなどに対抗する免疫系を改善するうえでもっとも重要なものなのです。睡眠もよくとれるようになり、エネルギーも満ち溢れ、精神的にもより明晰になり集中力も高まるでしょう。基本的に、健康上のすべてのことは、腸内細菌叢のバランスがうまくとれることで改善されるのです。
私は、私自身が身をもって経験したこの断続的な絶食による驚くべき効果に基づき、この方法が、体を脂肪燃焼モードにして、病気のさまざまな指標を改善するための、もっとも強力な方法であると固く信じています。この効果は、絶食の時期にエクササイズを行うことによってさらに倍増させることができます。
明らかに、この絶食法は自分や家族の健康のために使える力強い方法であり、あなたのフィットネスレベルを次の段階へと進めてくれるすばらしい方法なのです。
*注)これらの健康情報および教育メッセージは、チョイス ニュートリションによって翻訳されています。
記事の掲載目的は健康、栄養、 トレーニングなどに関する情報の提供と共有にあり、 個人の健康状態にアドバイスを与えるためのものではございません 。食事法、トレーニング法、 その他の健康管理法につきましてはそれぞれの責任において実行さ れますことをお願い申し上げます。また、 体に違和感や不調があるときには医療機関へのご相談をおすすめい たします。なお、 記事の内容に関するお問合せにはお応えしておりませんのでご了承 ください。