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新情報‐医学誌「ストローク」による人工甘味料の摂取リスクについての最新研究結果

新情報‐医学誌「ストローク」による人工甘味料の摂取リスクについての最新研究結果

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ダイエット飲料はアルツハイマー病や脳卒中のリスクを300%アップする

人工甘味料入りのソフトドリンクを多く飲むことと、脳卒中および認知症リスク上昇には関係があることが、4000人以上を対象とした分析結果から判明した。

観察研究では、少なくとも1日に1回人工甘味料入り飲料を飲む人は、飲まない人に比べて、10年間で虚血性脳卒中のリスクがほぼ3倍、アルツハイマー病のリスクは2.9倍であった。

米国農務省(USDA)によると、アメリカ人は2016年におよそ1100万トンの砂糖を消費しているが、その多くはスポーツドリンクや炭酸飲料など砂糖のたっぷり入った飲み物からである。

新しい研究では、こういった砂糖の摂りすぎー中でも果糖ーの摂りすぎは、脳に損傷を与えると示された。さらに、砂糖入りの飲み物を頻繁に飲む人は、飲まない人と比べ、記憶する能力が低く、脳全体の体積が小さく、また脳の海馬領域(学習および記憶能力に重要な部分)が著しく小さいことも示されている。

しかし、それならとダイエットソーダに手を伸ばす前に、以下の研究結果を読むべきである。

追跡調査では、ダイエット飲料を毎日飲む人は、飲まない人と比べて脳卒中や認知症のリスクがほぼ3倍になると判明

ただ、研究者はすぐに、これらの知見(Alzheimer’s & Dementia and Stroke誌上でそれぞれ別個の論文として発表されている)は、相関関係にあるものの、原因と結果を示すものではないと指摘している。ダイエットソーダや砂糖の入った飲み物の摂りすぎは控えるべきであるが、これらの飲料が脳に実際にダメージを与えているのかやその作用、さらに、別の要因となりえる血管の病気や糖尿病などの影響を判断するには、さらなる研究が必要だと注意している。

「これらの調査は、決定的なものではないが、大きな可能性を示す重大なデータである」と、ボストン大学院医学部(MED)の神経学教授であり、同大学アルツハイマー病研究センター教員、そして上記2つの論文の主席(第一)著者である、スダー・セシャドリ教授は言っている。

「砂糖の多く入った飲み物を摂取する利点はあまりないと見られるが、かといって、砂糖を人工甘味料に替えるのも意味があるとは思われない」

「おそらく、昔ながらの良質の水を飲むのが一番よいのかもしれない」とセシャドリ教授は加えている。

MEDの神経学部フェローであり、フラミンガム心臓研究(FHS)の調査官、そして両論文の責任著者であるマシュー・ペイス氏によると、砂糖のとりすぎが心血管や代謝性疾患(肥満や心臓病、Ⅱ型糖尿病)などと関係があるのは昔から分かっているが、それが長期的に脳へ与える影響についてはほとんど知られていない。ペイスは砂糖の総消費量を調べる方法として、砂糖の多く入った飲み物を選択した。彼は「食事に含まれる砂糖の量を一切合切調べるのは難しい。なので我々は、砂糖の多い飲料を代用として使用した」と述べている。

2017年3月5日のAlzheimer’s & Dementia誌上で発表された1つ目の調査で、研究者は、フラミンガム心臓研究第3世代コーホートに参加したおよそ4000名から得られたMRIスキャン(磁気共鳴映像法)や認識能力テストなどのデータを調査した(これらは、1948年の最初のフラミンガム心臓研究調査に参加した人の子供あるいは孫にあたる人々である)。ここでは、1日にどんな種類でも砂糖入り飲料(炭酸飲料、フルーツジュースあるいはその他のソフトドリンク)を2回以上飲む人、あるいは炭酸飲料のみを1週間に3回以上飲む人を対象とした。

結果、これら「多く飲む」グループの人たちには、脳の全体積が小さい、エピソード記憶力の退化、海馬の縮小など、早期アルツハイマー病のリスク要因である脳の老化が進行している複数の兆候が見られた。さらに、ダイエットソーダを多く飲む(1日に1回以上)ことと、脳体積の小ささに関連性があることも発見した。

2017年4月20日にStroke誌上で発表された2つ目の調査では、研究者は上の世代のコーホートデータのみに着目し、特にこの試験参加者が、アルツハイマー病による脳卒中や認知症に診断されたかを調べた。ここでは、調査参加者が飲んでいる飲料を7年の間に3回調査したのち、その後さらに10年間にわたって観察を続け、45歳以上の2888人の脳卒中のエビデンス、60歳以上の1484人からは認知症のエビデンスを探した。結果は意外にも、砂糖の多い飲料を飲むことと脳卒中や認知症に、関連性は発見されなかった。しかし、1日に少なくとも1回ダイエットソーダを飲む人は、脳卒中および認知症のリスクがほぼ3倍であると発見した。

ただこの研究では、年齢や喫煙、食事内容など他の要因も考慮に入れているが、調査期間中に糖尿病を発症していた場合など、認知症のリスクとなりえる別の要因が調査結果に全く影響を与えていないとは断定できていない。糖尿病の患者は、糖分摂取を抑えるために平均よりダイエット飲料を多く飲むが、ダイエット飲料と認知症や血管系の病気との関連性が、実際は糖尿病からきている可能性もありえる。しかし、これらの疾患が新しい知見の全てを説明できるものではない。

「ダイエット飲料を飲むことがこれらの結果につながっているのは驚くことだ」とペースは言っている。なぜなら、調査前にはダイエット飲料の摂取と脳卒中の関連は指摘されていたが、認知症との関連は知られていなかったからだ。ペースは加えて、この研究は人工甘味料の種類を区別しておらず、さらに、他にも人工甘味料を摂取している可能性も考慮に入れていないと言っている。

人工甘味料の害については、腸内菌が変わってしまうことから、脳が「甘いもの」への認識を変えてしまうことまで、多くの仮説が研究者によって出されているが、「根底にあるメカニズムを解明するには、まだまだ多くの研究が必要である」と、ペースは述べている。

出典:

  1. Matthew P. Pase et al.Sugar- and Artificially Sweetened Beverages and the Risks of Incident Stroke and Dementia:A Prospective Cohort Study.Stroke, April 2017 DOI: 1161/STROKEAHA.116.016027
  2. Matthew P. Pase, Jayandra J. Himali, Paul F. Jacques, Charles DeCarli, Claudia L. Satizabal, Hugo Aparicio, Ramachandran S. Vasan, Alexa S. Beiser, Sudha Seshadri.Sugary beverage intake and preclinical Alzheimer’s disease in the community.Alzheimer’s & Dementia, 2017; DOI: 1016/j.jalz.2017.01.024

注)これらの健康情報および教育メッセージはチョイスニュートリションが翻訳しております。記事の掲載目的は健康、栄養、トレーニングなどに関する情報の提供と共有にあり、個人の健康状態にアドバイスを与えるためのものではございません。食事法、トレーニング法、その他の健康管理法につきましてはそれぞれの責任において実行されますことをお願い申し上げます。また、体に違和感や不調があるときには医療機関へのご相談をおすすめいたします。なお、記事の内容に関するお問い合わせにはお応えしておりませんのでご了承ください。

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