テストステロン、主として精巣内で作られるホルモンは、しばしば「男性らしさ」の象徴とされます(しかし、女性にもテストステロンは存在します)。実際にテストステロンは、男性のセックスや生殖能力に大きな役割を果たしています。それは、性的および生殖機能、筋肉量、毛髪の成長にも影響を及ぼしており、そのほか、あまり「派手ではない」役割も持っています。しかし、派手ではなくとも、それは同じくらい重要な役割で、骨密度を維持したり、赤血球数を保ったり、生活への満足度にも関係があります。
およそ30歳ごろから、男性のテストステロン値は減少をはじめ、それは加齢とともに下降を続けます。多くの化学製品、例えばスタチン(コレステロール値を下げる薬)などの市販薬によっても、男性のテストステロン産出量は、有害効果を受けてしまいます。同時に、水や食べ物、環境汚染物質にもエストロゲン様物質が含まれているため、それらに触れることによってエストロゲン値が上昇します。
自然にテストステロン値をアップする、9つの素晴らしい方法
1.体重を減らす
あなたが標準体重をオーバーしているなら、多すぎる体重を少し落とすことによってテストステロン値を上昇させられるかもしれません。2012年の内分泌協会での学会では、そのような研究が発表されました。太りすぎの男性は最初からテストステロン値が低くなりがちです。なので、テストステロンをもっとも必要とする際にその産出を増やすためにも、体重を落とすのは非常に重要な点となります。
もし本気で体重を落とすつもりならば、加工された砂糖を食生活から厳しく制限しなければいけません。特に、果糖などの加工糖は、肥満がまん延する大きな要因であることがはっきりと証明されています。なので、普段の食生活から炭酸飲料を絶ち、加工食品やフルーツジュース、さらに果物の取りすぎなどにも気を付けて果糖を制限することが重要です。
理想をいえば、果物をも含めた果糖摂取量のトータルを1日25グラム未満にするべきです。これは特に、もしあなたがインスリン抵抗性のある人でかつ体重が多すぎ、血圧が高い、糖尿病あるいはコレステロール値が高い場合にはそうするべきです。また、果糖を絶つかあるいは厳しく制限することに加えて、すべての穀類と牛乳(生乳も含む)を絶つことが重要です。牛乳には乳糖(ラクトース)という糖分が含まれており、これはインスリン抵抗性を増やすとされています。なので、体重を減らしたいなら牛乳は避けるほうが賢明です。
朝食用のシリアルやベーグル、ワッフル、プレッツェル、ドーナツ、パスタ、パンなどほとんどの精製炭水化物や、その他加工食品は、体内ですばやく糖分に分解されます。そして、インスリン濃度を上げてインスリン抵抗性を引き起こします。このインスリン抵抗性は、すべての慢性疾患や症状の根本的な要因とされており、体重増加もそのひとつです。
こういった問題のある食品群を食事から外し、代わりにもっと健康的である、野菜や健康的な脂肪分など(ココナツオイルやアボガドといった天然の飽和脂肪など)と代替するとよいでしょう。あなたの体は、穀物や砂糖よりも、微量栄養素が豊富な野菜に含まれる炭水化物のほうをより好みます。なぜなら、それらはグルコースなどの単糖が体内で変換されるのを遅らせ、インスリン値を下げるからです。穀類や糖分を食事から減らすと、概して、食べる野菜の量を大きく増やす必要があります。同時に、たんぱく質や良質の脂質も定期的に摂取するよう心がけるべきです。
以下に、ステップごとにまとめた食事プログラムを、総合的なオリジナル栄養プランに基づいてまとめました。あなたが体重を減らそうとしているなら、ぜひこれを参考にしてみましょう。
あなたが何を食べるかが、目標体重まで減らせるかの大きな原動力になります。強度が高く、一気にエネルギーを爆発させるタイプのエクササイズを、週に2~3回、総合的なフィットネスプランと合わせて行うことが大切です。そして、利点は他にもあります(以下参照)。
2.高強度のエクササイズ(断続的な絶食と組み合わせるもの)
継続的な絶食と、短くて高強度のエクササイズは、テストステロン値のアップに大きく効果があるとされています。
短時間での強度の高いエクササイズは、テストステロン値のアップに効果的で、かつテストステロン低下の防止の効果があると証明されています。逆にエアロビクスや、中程度のエクササイズを長時間続けるのは、テストステロン値でいうと逆効果か、あるいは効果がないとされています。
継続的な絶食をすると、インスリンやレプチン、アディポネクチン、グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)、コレシストキニン(CKK)やメラノコルチンなど、満腹ホルモンの出現が増え、テストステロン値がぐっとアップします。これらのホルモンはすべて、健康なテストステロンの働きを活性化して性欲を増加させ、加齢にともなうテストステロン値の下降を防ぎます。食事のあとに、乳清タンパク(草を与えて育てられたものであることを確認しましょう。それでないものは品質が劣ります)をとると満腹/テストステロン増幅効果がさらに増します。空腹ホルモンは、テストステロン値アップと性欲に対して逆効果になります。以下に、高強度エクササイズのコースの一般的な例をあげます。
- 3分間のウォームアップ
- 高強度の激しいエクササイズを約30秒間、体力の限り、激しく素速く行う。もうこれ以上はあと数秒もできない、と思うくらいまで激しく行ってください。
- 体力を回復させながら、ゆっくりから中程度のペースで、90秒続けます。
- 先ほどの高強度の激しいエクササイズと、回復のエクササイズを7回繰り返します。
ご覧のように、ワークアウト全部でも20分程度です。たったの20分です!すばらしいと思いませんか?しかも、この20分間のうち75%はウォーミングアップやクールダウン、回復タイムなのです。激しいエクササイズは、たったの4分程度です。これをやったことのない人には、たった4分間のエクササイズでこれほどの効果があるとはにわかには信じられないほどです。しかし、これだけなのです。
覚えておいてほしいのは、最大の激しさで30秒間以内なら、本質的にどんなトレーニング器具を使っても構いません。-エリプティカル・マシンでもトレッドミルでも、水泳をすることでも、屋外を全力疾走することでも何でもです。(トレッドミルの場合は、この器具を使いこなせるほどの体力がつけてからにしましょう。転倒するとこのマシンは非常に危険です。外のランニングをする場合でも、けがに注意してください)
ただ、正しくストレッチを行い、けがを防ぐためにもゆっくりと初めてください。2~3回の繰り返しから始めて、自分に合った量からスタートしましょう。特に、まだ体重が重すぎる場合は最初から8回の繰り返しすべてをやろうとしてはいけません。
3.亜鉛を多くとる
テストステロン産生において、ミネラルの亜鉛は重要です。6週間ほど亜鉛を補足することにより、テストステロン値が低い男性に目覚ましい改善がみられました。同様に、研究によると、食事から亜鉛を制限した場合にはテストステロン値が有意に減少し、反対に亜鉛を補足した場合には増加すると示されました。さらに、エクササイズからくるテストステロン値の減少を防ぎます。
米国の国立健康栄養研究調査によると、60歳以上の成人の45パーセントは、必要な量の亜鉛を摂取していないとみられています。そして、栄養サプリメントを補足摂取した場合でも、高齢者のおよそ20~25パーセントは、亜鉛摂取量が足りていないといわれています。
亜鉛は食事からとるのが一番です。たんぱく質が豊富な肉や魚などに加え、亜鉛が含まれる食品には、生乳、チーズ、豆、そしてケフィアなど生の牛乳から作られるヨーグルトなどがあります。あなたがベジタリアンなら、十分な亜鉛を食事からとるのは難しくなります。肉を食べる人でも、近年の畜産業のやり方だと、大量の化学肥料や殺虫剤が使用されているため、亜鉛の摂取は簡単ではありません。これらの化学物質は、土壌内の栄養を激減させてしまいます。植物が吸収して、それを食べるあなたがまた吸収する亜鉛などの栄養素が激減するのです。
多くの場合、栄養素は調理の段階でさらに減少してしまいます。ほとんどの食品は、調理することによって亜鉛の量が劇的に減ってしまいます。たいていの場合は、火を通しすぎるなどによります。
しかし、もしサプリメントで亜鉛を摂ろうとするならば、1日40mg以下を守ってください。この量が、大人1日の摂取量の上限です。亜鉛を摂りすぎると、体が銅などの他のミネラル分を吸収するのを妨げるという問題が発生します。また、副作用として吐き気などを感じることもあります。
4.筋力トレーニング
高強度のエクササイズに加え、本当に強化集中してやった場合、筋力トレーニングもテストステロン値の大幅アップに効果があると知られています。テストステロン値アップのために筋力トレーニングをするときは、ウエイトの重さをあげて、繰り返しの回数を少なくしましょう。その後、デッドリフトやスクワットなど、多くの筋肉を鍛えるエクササイズへ移っていきましょう。ウェイトトレーニングは、ゆっくり行うことによって体力を再び充電することができるのです。動きをゆっくりにすることによって、実際はそれを高強度の激しいエクササイズへと変えているのです。「スーパースロー・ムーブメント」は、筋肉の動きを、たんぱく質のフィラメント(筋肉を動かす役割をする)間の架橋に、微細なレベルでできるだけ多く伝えることができます。
5.ビタミンDのレベル最適化する
ビタミンDは、ステロイドのホルモンであり、健康な精巣細胞の核の発達や、精液の質や精子数に必須のものです。ビタミンDもテストステロン値をアップさせ、その結果性欲も増進します。ある研究によると、肥満の男性にビタミンDのサプリメントを与えたところ、1年後にはテストステロン値が有意に上昇しました。
現在、ビタミンD欠乏症は、アメリカをはじめ世界中の多くの地域でまん延しています。大きな理由のひとつは、人々はビタミンDをつくる過程で重要な要素である、太陽の光をあびる時間が少なくなっているからです。なので、ビタミンDの効果をじゅうぶん受けるには、まず自分のビタミンDレベルを知ることです。それには25(OH)Dテスト、または25-ヒドロキシビタミンDと呼ばれるテストでチェックすることができます。数年前までは、必要とされるビタミンDの量は1ミリリットルあたり40~60ナノグラム(ng/ml)でしたが、近年は最適なビタミンDレベルは50~(ng/ml)に変わりました。
必要とされる健康な量のビタミンDを摂取するには、自然の太陽光を浴びるのがいちばんよい方法です。皮膚のできるだけ広範囲に、肌の色がほんのわずかピンク色になるくらいまで直接太陽光を浴びさせることによって、体がビタミンDを最適な量まで作り出すのであり、それが必要なのです。日光を浴びることができないなら、安全な日焼けマシーン(不要なEMFフィールドを避けるためにも、磁気バラストより、電気バラストのほうが良い)を使用することもできます。効果のあるUVB ビタミンD3の光線は、4月から9月までの夏の間にしか得ることができません。太陽の元に、長袖長ズボンで出かけるなんてばかげています。必要なのは、できるだけたくさんの範囲の皮膚を太陽の光のもとにさらすことです(顔は除く。帽子はかぶりましょう)。一度に20分程度、それを週に3回程度太陽に皮膚をさらすので十分です。加えて、1年に1度か2度、ビタミンD量のチェックを血液検査でしてもらうのもよいでしょう。
ただ、日焼けのしすぎはいけません。徐々にゆっくりと太陽にあてましょう。UVクリームには、毒性のある化学薬品が含まれており、この薬品が皮膚を浸透して血管に入り込むため、推奨しません。必要な時間の太陽光を浴びると、直射日光を避けて日陰に入るか、長袖の服をはおるなどして、肌の焼きすぎを避けましょう。
また、ビタミンD3(ビタミンD2ではない)の経口サプリメントをとることもできます。研究では、平均的な大人は、欠乏症にならないための最低量である40 ng/mlより上にするためには、1日に8,000IUのビタミンDが必要だと示しています。
6.ストレスをためない
人間は多くのストレスにさらされると、体からストレス・ホルモンのコルチゾールを多く放出します。そのホルモンは、テストステロンの効果を阻害すると考えられます。なぜなら、生物学的な立場から見ると、テストステロンに関連した行動(求愛行動、闘争や攻撃性)は、緊急時の生存可能性を下げるからです(というのも、コルチゾールによって「闘争・逃走反応」が優勢になるのです)。現代では、慢性的なストレスによって結果的にコルチゾールの値が上がり、長期的に見るとテストステロンの効果が阻害されてしまうという、望まぬ結果になってしまうのです。
家族や友人と、一緒の時間をとりましょう。空いた日には、自分が心から楽しめることをしましょう。ジムに行ったり、ビーチで過ごしたり山へキャンプに行ったりなど、楽しく気持をリフレッシュできる活動をして過ごし、仕事などマイナスの気持になることから離れましょう。その瞬間を楽しみましょう。自分では変えようもない事柄や相手のことを考えて過ごしたところで、あなたの人生にとって何もいいことはありません。そして、気持ちが乱れることではなく、楽しい気持ちになることを考えるように自分の心を訓練しましょう。
7.食生活から砂糖を減らすか、完全になくす
テストステロン値は砂糖を摂取した後に下がります。これは、砂糖がインスリン値を上げるからと見られ、また別のテストステロン値減少の要因です。USDAの概算によると、平均的なアメリカ人は1日に小さじ12杯の砂糖をとっています。これは、一生に換算すると、なんと人生において2トンの砂糖を摂取することになります。なぜ我々がこんなに多くの砂糖を摂取しているのかは簡単です-おいしいから、です。そして、それは脳にドーパミンやオピオイドシグナルを介して快感を与えます。
それが、私たちの体や心にどういう影響を及ぼしているかはまったく別の話になりますが、多くの人は、食生活から砂糖を減らすか一切絶つことによって、体の健康が非常に良いほうへ改善されています。
覚えておいてほしいのは、砂糖や果糖が加えられた食べ物は、パンやパスタなどの穀類も含めすべて、量を制限するか、できれば食事から一切絶ち切ったほうがよいのです。この砂糖の入った食べ物とは、フルーツジュース、炭酸飲料、スポーツドリンク(砂糖のかたまりです)や、マルトデキストリンの入った製品も含みます。
8.健康的な脂肪分を摂取する
健康的な、という中には、アボガドやナッツ類に含まれるような単不飽和脂肪酸および多価不飽和脂肪だけでなく、飽和脂肪も含みます。これらの脂肪は、テストステロンを作るうえで必須だからです。研究では、食事内容のうち脂肪のエネルギーが40パーセント以下だと(その脂肪は主に動物性の飽和脂肪)、テストステロン値の減少につながるとされています。私自身の食事は、60~70%が健康的な脂肪で、他の専門家も、理想的な食事は50~70%程度の脂肪分であると賛成しています。あなたの体がもっとも健康的に機能するためには、動物性や植物性の飽和脂肪(肉や乳製品、ある種類の油、ココナツなどの熱帯植物)をも必要としていることを覚えておいてください。そして、砂糖や穀類など、他のでんぷん質の炭水化物ばかり食べてこれらの重要な食品群をおそろかにすると、あなたの健康や体重は、ほぼ確実に問題を起こすといえます。
テストステロン値をアップするのに必要な、健康的な脂肪には以下のものがあります。
オリーブやオリーブオイル | ココナツやココナツオイル | 品質のよい無塩バター |
アーモンドやペカンなど、生のナッツ類 | オーガニックで殺菌済み卵の黄身 | アボガド |
牧草で育てられた肉 | ヤシ油 | 非加熱オーガニックナッツ油 |
9.乳清タンパクなどからの、分岐鎖アミノ酸(BCAA)を多く摂取する
研究では、BCAAはテストステロン値のアップにつながると示されています。中でも特に耐性トレーニングと組み合わせて摂取した場合に効果があります。BCAAはサプリメントからも摂取することができますが、ロイシンなど、BCAAをもっとも多く含むものは乳製品からとることができます。中でも、品質の良いチーズや乳清プロテインがおすすめです。乳清プロテインをとるときは、穀物飼料で育った牛ではなく、牧草で育てられた牛のプロテインを選ぶようにして下さい。牧草で育った牛と穀物飼料で育った牛では、生物学的にも大きな違いがあります。それに、穀物飼料の牛の場合は、飼料が遺伝子組み換え(GMO)のトウモロコシおよび大豆を使っている場合があり、アメリカの場合は飼料の98%が遺伝子組み換えです。食品から自然にロイシンをとった場合でも、しばしばそれは、タンパク同化のアナボリック効果よりも、ブロック効果に浪費されてしまいます。なので、正しいアナボリックの環境を作ろうと思うと、ロイシンの消費量を、単に維持するレベルではなく大幅にアップしなければいけません。
参考文献
Step Case Life Hack July 6, 2012
1Arch Androl. 1981 Aug;7(1):69-73
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6Horm Behav. 2010 Nov;58(5):898-906. Epub 2010 Sep 15
7Study presented at The Endocrine Society’s 91st Annual Meeting, June 13, 2009, Washington, D.C.
8J Steroid Biochem. 1984 Jan;20(1):459-64
9J Strength Cond Res. 2010 Apr;24(4):1125-30
*注)これらの健康情報および教育メッセージは、チョイス ニュートリションによって翻訳されています。記事の掲載目的は健康、栄養、 トレーニングなどに関する情報の提供と共有にあり、 個人の健康状態にアドバイスを与えるためのものではございません 。食事法、トレーニング法、 その他の健康管理法につきましてはそれぞれの責任において実行さ れますことをお願い申し上げます。また、 体に違和感や不調があるときには医療機関へのご相談をおすすめい たします。なお、 記事の内容に関するお問合せにはお応えしておりませんのでご了承 ください。