基礎知識

誤った食生活と運動不足は老化による疾患の発生を早める(マウス上の実験)

誤った食生活や運動不足によって、老化は早まるのでしょうか?メイヨークリニックの研究者たちは、これらの変更可能な生活習慣と、生物的な老化プロセスの間には関連があると信じています。最近の研究で、誤った食生活や運動不足は細胞の老化を加速し、結果的に老化による疾患が早く発生することがマウス上の実験で証明されました。その結果は現在Diabetes上に掲載されています。

細胞の老化は、加齢にともなって現れる病気や諸症状の原因です。メイヨークリニックの、Robert and Arlene Kogod Center on Aging (ロバート&アーリーン・コゴッド老化センター)の研究者は、エクササイズは細胞の老化が早期に蓄積するのを防ぎ、誤った食生活による悪い影響(身体機能の不全、心臓および代謝機能不全、糖尿病など)も防ぐと発見しました。
「我々は、生物的および臨床的な観点からも、誤った栄養の摂りかたや体を動かさない生活習慣は、実際に老化を加速すると考える」と、クリニックのCenter of Aging’s Healthy and Independent Living Program(高齢者の健康および独立した生活プログラムセンター) のディレクターであり、今回の実験の首席著者であるネイサン・レブラッサー医学博士は言っている。

「そして今、我々はそれを細胞レベルで詳しく証明し、臨床的に確認することができる。そして、人々に覚えておいてほしいのは、たとえ今の中年期にまだ糖尿病や心血管系の病気、あるいはアルツハイマー病の診断を受けていないとしても、そのプロセスの基礎をなす生物学は着実に進行中だということだ」

研究者は実験で、通常の健康的な餌を与えるマウスと、「ファストフード」と名付けた餌を与えるマウスで、両者を比較しました。後者は飽和脂肪やコレステロールを多く含む餌と、砂糖入りの甘い飲み物を与える食餌です。ファストフードを与えられたマウスは、健康パラメーターにおいて体重や身体組成に有害な変化を示し、体脂肪量はおよそ4か月の間に300パーセント近くまで増加しました。体脂肪は主に体の中央部の臓器周辺、つまり肥満と関連した病気が起こりやすい部分に蓄積されていました。
食事をファストフードにするのが健康に有害影響を及ぼすのは明らかですが、一方で運動をすることで健康状態は大きく改善されることも研究者は発見しました。健康な餌を与えられているマウスも、そうでないマウスも両方とも、そのうち半数には運動用の回転かごが与えられました。ファストフードの餌を与えられて運動をしたマウスは、体重増加および脂肪蓄積が抑えられ、また細胞老化からも守られていました。通常の餌を与えられたマウスも同様に運動による恩恵を受けていました。
「人々の中には、老化は誰にも避けられない決まった運命だと信じていて、私が65歳や70、80歳になるころにはアルツハイマー病で心血管疾患を持ち、骨粗鬆症を患っているだろうと考えている者がいる」とレブラッサー医学博士は言っている。「だがこれは明らかに、健康的な食事や、さらに重要なことだが、ただ定期的に体を動かすことなど、自分で変えられる要素の重要性を示している」「それは、別に我々にマラソン選手になれと言っているわけではない。ただ、日常的な活動レベルを上げて健康を維持し、老化やそれにともなう疾患が進むのを防ぐ必要があるということだ」

参照文献:
Marissa J. Schafer, Thomas A. White, Glenda Evans, Jason M. Tonne, Grace C. Verzosa, Michael B. Stout, Daniel L. Mazula, Allyson K. Palmer, Darren J. Baker, Michael D. Jensen, Michael S. Torbenson, Jordan D. Miller, Yasuhiro Ikeda, Tamara Tchkonia, Jan M. van Deursen, James L. Kirkland, Nathan K. LeBrasseur. Exercise Prevents Diet-induced Cellular Senescence in Adipose Tissue. Diabetes, 2016; db15029 DOI: 10.2337/db15-0291

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