誰しも時にはワークアウトを休むでしょう。旅行や病気、あるいは仕事が非常に忙しいなどでジムに行けないときもあるでしょう。また、ただやる気が出なくて1回2回と続けて休んでしまうこともあるかもしれません。
ちなみに、ワークアウトを休むのと、ワークアウトの間隔を適度に空けるのとは別の話です。例えば、高強度インターバルトレーニング(HIIT)でいえば、これは最大でも週に2~3回しか行ってはいけません。なぜなら、体への負担が非常に大きいため、回復する休憩期間が必要だからです。
しかし、ワークアウトを休むのが習慣になってしまうと、体やフィットネスレベルに影響してきます。それは、思うよりも早くマイナスの変化として現れてくるのです。
どのくらいで体型が崩れるのでしょうか?
鍛えた体が崩れるまでにどのくらいかかるか、はっきりとした法則はありません。しかし一般的に言って、もともと鍛えた体を持っていた場合はワークアウトをやめたとしても、普通の人よりは長く元の状態を保っていることができます。
一方、Journal of Applied Physiology(応用生理学)誌上で発表された研究では、ワークアウトをわずか2週間休んだだけで、心血管のフィットネスや徐脂肪筋肉量、インスリン感受性がかなり減少すると示唆しています。1
カリフォルニアのアーバインにあるホーグ整形外科研究所のスポーツ医学専門医であるジェームズ・ティン医師は、CNNの番組で、エクササイズを止めた場合、体型が全く変わってしまうには2か月かそれ以上かかると話しています。2 これまでのワークアウトの成果が2か月でなくなるのでは早すぎるでしょう。しかし、これにはいろいろ異なる見解があります。多くの専門家は、エクササイズを全くしなくなった場合、平均的に2週間で、鍛えた体が崩れはじめるという点で一致しています。
しかし、クロスカントリーの国内マスターズで6度の優勝経験を持ち、現在はコーチをしているピート・マギルはShape誌上で、ワークアウトを1週間休んだだけで、これまでのフィットネスの効果が最大50パーセント失なわれることもあると話しています。3
通常、心血管のフィットネスは筋力より早く衰える
ワークアウトをあまり休むと、心肺持久力がはじめに衰えます。 ある研究では、わずか12日間エクササイズを休んだだけでVO2max(最大酸素摂取量)つまり、心血管の持久力を測る数値が最大7パーセント下がり、持久力と関連のある血中酵素は50パーセントまで下がりました。4
同様に、耐久スポーツである自転車競技の選手が4週間、運動を行わなかった場合はVO2 maxが20パーセント減少するという結果になりました。5,6 覚えておいてほしいのは、これは鍛えられたアスリートでの数字ということです・・・。 エクササイズを始めたばかりの初心者の間では、向上したVO2max値は、4週間運動から離れると完全に元に戻ってしまいました。7
しかし、エクササイズ初心者における筋力のロスでは反対の現象も真実で、研究によると、新しく獲得したばかりの筋力は、数カ月エクササイズを休んだ場合でも残りがちであると示しています。例えば、これまでにトレーニング経験のない男性に対して、15週間にわたって行われたウエイトトレーニングプログラムでは、プログラム途中で3週間の休みを入れても、試験の最終時に計測した筋力は何の影響も受けていませんでした。8
アスリートの筋力でいうと、およそ1か月の休みの後でも筋力は維持されるようです。しかし、ある種の筋肉繊維の中では大きな変化が起こっています。人間の体には、3種類の筋肉繊維があります。収縮がそれぞれ、遅い、早い、非常に速い、という3つの繊維です。
遅筋は赤色筋で、通常の筋力トレーニングやカーディオエクササイズで活性化されます。他の2つ(速筋および超速筋)は、白色筋で、高強度インターバルトレーニングあるいはスプリント(全力疾走)をしている時にのみ活性化されます。Greatist9には、以下のレポートが掲載されています:
「Medicine and Science in Sports and Exercise(スポーツおよびエクササイズの医科学)誌は、ランナーやボート漕手、瞬発力が必要なアスリートを研究した結果のレビューを発表した。10 結果、どのグループもすべて、1か月のあいだ活動を休んでも、筋力繊維の強さに変化はみられなかった。
しかし、重大な注意点がある。一般的な筋力はその期間では落ちないが、スポーツで特定して使われる筋肉繊維は、わずか2週間ワークアウトを休んだだけで変化が起こる。例えば、持久力の必要なアスリートはそのわずか2週間で、苦労して身につけた遅筋繊維のかなりの部分を失ってしまう。同じことは瞬発力を要求されるアスリートの苦しいトレーニングの成果である速筋繊維にもいえるのだ」
長年のエクササイズ経験者のほうが、早く回復する
長い間ジムから遠ざかっていた場合は、ワークアウトを再開するのは少し不安かもしれません。そういう場合は、急に始めず、けがをしないよう徐々に開始しましょう。でも、あなたが昔からずっとエクササイズをしていたならば、最近はじめたばかりの初心者と比べると、簡単に元の状態に戻ることができるでしょう。
年齢にも関係があります。年をとればとるほど、適度なエクササイズを普段から行っていないと、筋肉の衰えが早くなります。そして、元にもどるにも時間がかかります。65~75歳の人間は20~30代の人間とくらべて、半年運動から遠ざかると、ほぼ2倍の速さで筋力を失ってしまいます。11
とはいえ、あなたが30代より上だからといってがっかりする必要はありません。年齢が上がるほど、3~4か月のウエイトトレーニングを行うだけで、2倍から3倍の筋力アップを得ることもできるのです。
ワークアウトに時間がとられるから休むのですか?
もし、ワークアウトを休む理由が時間であれば、簡単な解決法があります。ワークアウトの時間を短くして、そのかわり強度をあげるのです。エクササイズ専門家は、鍛えた体型を保つには30分から60分の中程度の強度のエクササイズをするべきという旧式のアドバイスを、急速に捨てつつあります。
多くの研究が、そのエクササイズのやり方は、健康効果においても時間的にもベストの方法ではないと示しているのです。ゆっくりしたペースで長い時間エクササイズを行うより、短時間にインターバルと呼ばれる高強度のエクササイズを行ったほうが、はるかに大きな効果を得ることができるのです。
例えば、コロラドで行われた、Integrative Biology of Exercise VI(第6回運動の生物学会議)で発表された、高強度インターバルトレーニング(HIIT)の研究では、より少ない時間(わずか2分半)でもっと多くのカロリーを燃焼することが分かりました。それは、最大に苦しい運動を30秒、5回繰り返します。そして、それぞれの間に回復用の4分の軽い自転車こぎを入れることで、220カロリーをも燃焼することが分かりました。12
Journal of Obesity(肥満ジャーナル)誌上で発表された研究では、12週間の高強度インターバルトレーニングによって、腹部、体幹部および内臓脂肪のすべてが、かなり減少しただけでなく、徐脂肪量および有酸素パワーも相当量アップしたと報告されました。13 また他の研究は、Cell Metabolism(細胞の代謝)誌上で、健康だがほとんど運動をしていない人が激しいエクササイズを行った場合、エクササイズは短くとも、即座にDNA にはっきりした変化が出ると示しました。14
急激なエクササイズで影響を受ける遺伝子の中には、脂肪代謝に関連のある遺伝子があるのです。特にこの研究では、エクササイズをすると、体でほぼ即座に遺伝子の活性化が起こり、それが脂肪を破壊する(脂肪分解性の)酵素の生産を増やすと示しています。
また他の研究では、体型は太目でもその他は健康な中年の成人が、2週間(週に3回)インターバルトレーニングをしただけで、インスリン感受性および血糖調節が改善されたと発見しました。15 その後の追跡調査でも、インターバルトレーニングがインスリン感受性によい影響を与えたと発見しています。
実際、この研究にはⅡ型糖尿病を完全に発症している人々も入っていました。そして、わずか一度のインターバルトレーニングによって、その後24時間の血糖値を改善することができたのです!16 私が個人的にも実行していて、おすすめの高強度インターバルトレーニングは、ピークフィットネス・メソッドです。これは、30秒の限界までのエクササイズの後に90秒の休息時間を置くもので、それを8回行います。
ワークアウトの間隔にはどのくらいの休息時間をおくべきでしょう?
ほとんどの人はエクササイズ不足が問題なのですが、エクササイズはいったん始めるとやみつきになることがあり、中にはやりすぎる人もいます。それは、エクササイズの強度をあげすぎたり、頻繁に行いすぎるといったものです。しかし、最大のフィットネス効果をあげるために本当に大切なのは、体を回復させることなのです。同様に頭に留めておくべきことは、強度をあげてエクササイズの頻度は減らす、ということです。
例えば、まだ体力のついていない初心者の場合は、高強度エクササイズを週に3回しても、体にそんなに負担はかかりません。しかし、いったん筋力や持久力が上がってくると、毎回のエクササイズが体に前より大きな負担(常に最大限の苦しさでエクササイズをしている場合)をかけるのです。
そうなると、エクササイズの回数を減らして体に回復時間を与えてあげたほうが賢明なのです。実際、エクササイズから建設的な効果を上げたければ、あなたの体が体力を回復する十分な休息時間をとる必要があるのです。覚えておきましょう。あなたのフィットネスが上がると結果的にエクササイズの強度も上がるゆえに、逆に体がそれを許容できる頻度は下がるのです。結論として、あなたは自分のフィットネスレベルやライフスタイルにあわせて、エクササイズのプログラムを常にカスタマイズし続ける必要があるということです。
ただ、一般論として、普通は高強度インターバルトレーニングを週3回以上はしてはいけません。高強度の筋力トレーニングは、最初は週2回から行っても構いませんが、その後体力がつくにつれ、より長い回復時間が必要になりますので、最終的には7~10日に1回まで頻度を落として下さい。それ以上は、やってもあなたの体を痛めるだけです。
高強度エクササイズに関しては、少ないほうがよい
高強度エクササイズの最大の有益効果の1つは、このエクササイズによってヒト成長ホルモン(HGH)が分泌されることです。このホルモンは、一般に「フィットネスホルモン」とも呼ばれています。しかし、ダグ・マクガフ医師が以前インタビューの中で行った説明によると、いったん体を鍛えてしまうと、あまり頻繁に成長ホルモンを産出する必要はないのです。
体が一度できあがると、回復のほうが重要になり、およそ3日から7日間の回復期間が必要となります。マクガフ医師は、体が鍛えあがった後はエクササイズを多くやりすぎることを強く禁止しています。それにはこういった理由があるのです:「副腎は腎臓のちょうど上に重なるように位置している。副腎のいちばん外側の層では鉱質コルチコイドが産生されて、体内の塩分および電解質の値が調節される。真ん中の層では、コルチコステロイドが産出され、糖分とストレスホルモンを調節している。
もっとも内側の層が、成長ホルモンおよび性ステロイドホルモンを分泌するところで、そのホルモンのフィードバックループの軸を含む。医学部で昔から、この副腎の3層を暗記するために使われてきた言葉がある。「塩分・糖分・セックス」―奥に進むほど、いいものがあるのだ。
しかし、覚えておくべきだ。副腎は、様々なものが統合された臓器である。副腎の3層は、完全に分かれてはいない。高強度エクササイズによって、週に3回副腎に刺激を与えようとしている場合を考えてみよう。一方であなたの体が既に強くなっていて、体は月曜のエクササイズの疲れからまだ回復していないのに、水曜にまた体を痛めつけようとしているのなら・・・ あなたはさらに奥のレベルを痛めつけているのだ。成長ホルモンを大幅に増やすかわりに、コルチゾールを大幅に増やすことになる。つまり、自分が望んでいることを、全く損っていることになるのだ。」
いつ、エクササイズを休んだらよいのでしょう?
いったん体を鍛えてしまうと、ありがたいのは、しばらく休んで、これまで蓄積させた体力を使ってそれを回復に回せるということです。これは、飢饉にそなえて脂肪をたくわえておくようなものです。これらの「備蓄」を使うのは、病気で体がストレス下にあるときなどです。あなたはおそらく、体が病気と闘うためにも休まなければと思うでしょうが、まず体が何を本当に求めているかを確認しましょう。
まだ体に十分エネルギーが残っていれば、エクササイズで発汗して体温を上昇させることで、実際に多くのウイルスを殺すことができるのです。しかし、エクササイズのしすぎは体にストレスを与え、免疫系も弱くなりますので、ワークアウトは中程度(速足のウォーキング程度)に留めておくべきでしょう。一般的に言って、エクササイズをやめておいたほうがよいのは、いわゆる「首から下」に以下のような症状があるときです:
・発熱
・せきや胸の詰まり
・倦怠感
・体全体のだるさや筋肉痛
・嘔吐、胃の不快感あるいは吐き気
しかし、症状がどのようなものであれ、あなたの体が訴えていることを注意深く聞きましょう。もしあなたがエクササイズをする気分ではなく、ひたすら休みたいなら、それがあなたの体が訴えていることなのです。それから、何度でも強調しておきたいことですが、体調が悪いときは、普段通りのエクササイズをやってはいけません。体の不調を軽く見てエクササイズをやりすぎると、あなたの免疫系に負担を与え、病気を長引かせてしまうのです。
ピーク・フィットネスなどの高強度エクササイズは、病気のときは行ってはいけません。なぜなら、高強度エクササイズはどんな形のものであれ、ストレスホルモンであるコルチゾールの産出をアップさせ、ナチュラルキラー細胞(白血球の一種で、ウイルス性因子から体を守る)の活動を阻害してしまうからです。
ゆえに、マラソンをした直後は病気にかかりやすくなるのです。実際、耐久性スポーツのトップアスリートは、平均的なスポーツ愛好者と比べて、年間2倍から6倍も、呼吸器系の感染症にかかりやすいのです。17
出典・参考文献
CNN March 24, 2015
1, 2 CNN March 24, 2015
3 Shape December 28, 2014
4 J Appl Physiol Respir Environ Exerc Physiol. 1984 Dec;57(6):1857-64.
5 J Appl Physiol (1985). 1993 Oct;75(4):1444-51.
6, 9 Greatist March 16, 2015
7 Med Sci Sports Exerc. 2001 Mar;33(3):413-21
8 Clin Physiol Funct Imaging. 2011 Sep;31(5):399-404.
10 Med Sci Sports Exerc. 2001 Aug;33(8):1297-303.
11 Med Sci Sports Exerc. 2000 Aug;32(8):1505-12.
12 Integrative Biology of Exercise VI meeting, Oct. 10-13, 2012, Westminster, Colorado
13 Journal of Obesity vol 2012 (April 6, 2012)
14 Cell Metabolism March 7, 2012: 15(3);405-411
15 Medicine and Science in Sports and Exercise, Oct 2011
16 Diabetes, Obesity, and Metabolism, 2012 Jan 23 [Epub ahead of print]
17 SPORTS SCIENCE EXCHANGE, CONTAGIOUS INFECTIONS IN COMPETITIVE SPORTS, SSE#56, Volume 8 (1995), Number 3
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