「日本人はたんぱく質不足って本当?」と疑問に思っている方もいらっしゃるでしょう。
たんぱく質とは肉や魚、大豆、乳製品などから摂れる栄養素です。人間の体にとって必要不可欠な物質であり、不足するとサルコペニアや虚弱のリスクが高くなります。
超高齢化社会となっている日本において、たんぱく質不足は見逃してはならない社会問題ともいえるでしょう。
本記事では、日本人のたんぱく質不足の実態からサルコペニア・虚弱のリスク、予防方法について解説します。
日本人はたんぱく質が足りていない!
つまり、先進国であるかどうかは関係ありません。日本人のたんぱく質不足は日本の食生活や働き方、日本社会全体のあり方に左右されているといえるでしょう。
日本人の平均たんぱく質摂取量はギリギリ
日本人のたんぱく質摂取量は1970年代の高度成長期において一時的に急上昇し、平均80gを維持していました。しかし、2000年以降から再び急激に減少し、2019年の時点で日本人の平均たんぱく質摂取量は70gになっています。
厚生労働省による18歳以上の1日あたりのたんぱく質摂取推奨量は、男性が65gで女性が50gです。一見すると、推奨量を満たしているように思えます。しかし、推奨量とは、栄養素の欠乏により病気にならない最低限の数値です。
つまるところ、日本人の平均たんぱく質摂取量は最良の健康状態を維持するには足りないといえます。食生活が欧米化してきたといえども、日本人の食生活では未だに適切なたんぱく質を摂取できていないのです。
デスクワークでもたんぱく質は必須
日本人のたんぱく質不足には、日本社会の働き方にも関係があるといえます。現代では世界的にデジタル化が進んでおり、いずれの職種でもデスクワークが主流です。活動が少ないデスクワークでは、自ら積極的にたんぱく質を摂取しようと意識する機会が少なくなります。
しかし、デスクワークで活動量が少ないからといって、たんぱく質量も少なくて良いわけではありません。むしろ活動量が少ないデスクワークでは、たんぱく質量が減少し、本来あるべき筋肉量が減ってしまうのです。
最良な健康状態を保つための目標値は、50代から60代の男性デスクワーカーならば、約91gから130gが必要になります。日本人の平均たんぱく質摂取量では、到底足りません。デジタル時代になった現代こそ、日本人は積極的にたんぱく質を摂取する必要があるのです。
たんぱく質不足とサルコペニアの関係
たんぱく質不足になると、あらゆる疾患にかかりやすくなります。なかでも、代表的なものがサルコペニアです。サルコペニアにより急激に筋肉量が減少した場合、日常生活に多大な支障が生じます。
適切な量のたんぱく質を摂取していればサルコペニアの発生率も低くなり、症状も緩和することができるのです。たんぱく質不足とサルコペニアは密接に関係した問題といえます。
サルコペニアは誰にでも起こり得る
急激な筋肉量の減少を引き起こすサルコペニアは、誰にでも起こり得る病気です。筋肉量は歳を取るにつれて自然と減少していきますが、急激な筋肉量の減少が見られた場合はサルコペニアを疑うべきでしょう。
サルコペニアの主な要因は老化や運動不足、疾患、そしてたんぱく質不足です。歳を取ると生活習慣が変化し、以前よりも活動量が減少し病気にもかかりやすくなります。さらに、たんぱく質などの必要な栄養素が不足すると筋肉量が急激に減少してしまうのです。
サルコペニアにより筋肉量が低下し筋力が弱まると、ふらつきや骨折、転倒のリスクが高くなります。日常生活においても入浴や階段の上り下り、着替えにも時間がかかり疲れやすくなるでしょう。また、口の中の筋力も弱まり、噛む力や飲み込む力も低下します。
サルコペニアにかかりやすいのは主に老化の進んだ高齢者ですが、運動不足により20代や30代などの若年層でも発症する可能性は大いにあります。デスクワークなどで運動量が少ない方や、運動をせずにダイエットをしている若い女性もサルコペニアにかかりやすくなるのです。
たんぱく質不足はサルコペニアを加速させる?
サルコペニアによって筋力が低下している場合は、筋肉量を増加させるたんぱく質が必要不可欠です。人間はたんぱく質を摂取することでアミノ酸を分解し体に吸収させます。吸収されたたんぱく質は、臓器や筋肉などの材料となるのです。
そのため、たんぱく質が不足しがちだと筋肉量が低下して、サルコペニアにさらなる追い打ちをかけてしまう可能性があります。20代や30代から老化現象が始まり進行し続け、サルコペニアになる人もいるぐらいです。
逆にいえば、日頃からたんぱく質を十分に摂ることでサルコペニアによる筋肉量の減少を予防できる可能性もあるといえます。高たんぱくの食事を積極的に摂るようにしましょう。
高齢者の生活に多大な影響を及ぼす
日本は高齢化が進んでおり、今後もさらに高齢者が増加すると見られています。年齢が75歳以上の人々が多く、高齢化社会ではなく超高齢化社会であるといえるでしょう。
老化によるサルコペニアの症状を持つ人々が増え、たんぱく質不足も解消せずにいると、社会に多大な影響を及ぼします。要介護者が増え、高齢者が超高齢者を介護する事例が増加するでしょう。
また、高齢者であっても生活習慣病にかかる恐れがあるため、糖尿病や感染症などの患者が増え、医療や介護も大変な状況に陥る恐れがあります。そのため、サルコペニアを発症した人々に対しては、早めに身体機能を強化する対応が重要です。
高齢者であっても、1日約50gから60gのたんぱく質を摂取する必要があります。さらに、体がたんぱく質を吸収しやすい状態にあるかどうかも大切です。健康維持を心がけている高齢者ならば、たんぱく質の吸収に問題はありません。
しかし、疾患を持っている高齢者の場合は体がたんぱく質を吸収しにくい可能性があります。主治医のもと疾患の治療を行うとともに、食事にて適切なたんぱく質の摂取を心がけましょう。
フレイルサイクルは危険信号
フレイルサイクルは虚弱サイクルと呼ばれ、高齢者に多い疾患のひとつです。フレイルサイクルになると、サルコペニアによる身体的な筋力の低下だけではなく精神的な面での気力も低下します。
フレイルサイクルが始まることは体の危険信号ともいえるでしょう。
フレイルは健康を害する悪循環となる
体全体が弱くなり病気にかかりやすいことをフレイル(虚弱)といいます。フレイルになる原因は低栄養状態です。筋肉量が減少するサルコペニアも低栄養状態が原因で起こります。
低栄養状態とは、たんぱく質やエネルギーが不足し体を動かすことが困難な状態のことです。低栄養状態が長くなればなるほど、免疫力や筋肉量が減少しサルコペニアやフレイル(虚弱)が発症します。
フレイル(虚弱)を発症した場合、身体機能だけでなくストレス耐性も弱くなるでしょう。引きこもりやうつ病など精神疾患にもかかりやすくなり、健康に必要な運動量も減少してしまいます。
そして、さらに低栄養状態となり、サルコペニアも悪化するという悪循環(フレイルサークル)が生まれるのです。フレイルサークルになった場合、改善しなければ自立生活が難しくなり要介護が必要な体になってしまいます。
フレイルサイクルを改善するには
フレイル(虚弱)サイクルを改善するには、まずサイクルの内容をよく理解することが大切です。フレイルサイクルの根元には、「低栄養状態」と「たんぱく質不足」によるサルコペニアがあります。
フレイル(虚弱)サイクルの悪循環を断ち切るには、「食事」「運動」「持病への適切な対策」の3つが重要です。食事に関しては、現在の自分の体に必要なたんぱく質と炭水化物、ビタミンなどをバランスよく摂取することを心がけてください。
肥満気味の方や運動不足の方は散歩やジョギングなど、手軽にできる運動を始めましょう。持病を持っている方は、医者の指示のもと運動療法を受けつつ、持病に対して前向きな気持ちで治療を行うことが大切です。
サルコペニアやフレイルへの予防方法5選
サルコペニアやフレイル(虚弱)の予防方法はいくつかあります。しかし、なかでも「食事」「運動」「口腔機能の向上」「こころのケア」「社会とのつながり」が効果的です。
サルコペニアやフレイル(虚弱)を確実に改善するには、体と心の両方へのアプローチが必要になることを覚えておいてください。
栄養のある食事を摂る
自分自身の適切なたんぱく質量を知るには、体重や日々のカロリー摂取量を知ることが重要です。1日に必要なたんぱく質は、体重1kgあたり約1.2〜1.5gになります。毎日体重を測りつつ、その日に必要なたんぱく質を摂取しましょう。
自分の体に必要なたんぱく質量を計算しつつも、さらに栄養バランスのとれた食事をすることが大切です。特にビタミンDとカルシウムの摂取を心がけましょう。調理が大変な場合は、宅配弁当などを活用するのも良いです。
運動を心がける
運動不足も筋力低下またはサルコペニアの発症率を上げる要素になります。1駅分を歩いたり、散歩をしたりするなど日ごろからこまめな運動を心がけてください。
昨今では、ダイエットに勤しむ女性も多いです。もちろん、太りすぎは良くありませんが痩せすぎも良くありません。適度な運動を心がけるとともに、普段からBMIや体重を記録して自分の標準体重を維持するよう意識しましょう。
口腔機能の向上に努める
サルコペニアになると口の中の筋力も衰えてしまいます。口腔機能が低下し、物を飲み下したり、噛んだりする働きが難しくなるのです。
そのため、食材の調理方法を工夫し、口腔機能の向上に努めましょう。また、食欲がないときでも主菜(おかず)は食べきれるよう努力してください。食べられるものが増えれば、食欲も増加する可能性があります。
こころのケアも忘れない
フレイル(虚弱)体質になった場合、こころのケアも忘れないようにしましょう。疎外感や抑うつ、孤独感などでフレイル(虚弱)サイクルに陥りやすくなります。食欲も低下し、体に必要なたんぱく質やその他の栄養素も摂取しにくくなるでしょう。
現在は一人暮らしの高齢者も多くなっています。1人の時間を持つことも大切ですが、趣味や地域イベントなどに参加して友人を持つことも重要です。何かあったときに信頼できる相談相手がいれば、こころの憂鬱さも少なくなります。
社会とのつながりを持つ
社会とのつながりが薄くなってしまうと気分的にも落ち込み、フレイル(虚弱)サイクルになりやすいです。社会的に孤立したと感じてしまわないように、社会とのつながりを積極的に持ちましょう。
例えば、ご近所との付き合いや社会活動、ボランティアに参加して人との交流を持つことが重要です。最初は戸惑いがあるかもしれませんが、思い切って参加してみてください。社会の一部になった感覚はフレイル(虚弱)サイクルを断ち切るエネルギーになります。
現在のたんぱく質源は2種類
現在、地球上にあるたんぱく質源は動物性たんぱく質と植物性たんぱく質の2種類です。どちらも身近な食材から摂取できるものですが、それぞれ根本的な違いも持っています。体への効果も異なるため、両方をバランス良く摂取することを心がけましょう。
動物性たんぱく質
動物性たんぱく質とは、卵やお肉、お魚、乳製品など、動物性の食材や食材から摂れるたんぱく質のことです。動物性たんぱく質にはアルブミンが豊富にあります。
アルブミンとは血液中に存在するたんぱく質のうち、最も多いたんぱく質で老化防止にも役立つ物質です。たんぱく質不足になるとアルブミンの量も減ってしまい、胸水や腹水、むくみといった症状が現れます。
アンチエイジに取り組んでいる方は、動物性たんぱく質を積極的に摂取すると良いでしょう。
植物性たんぱく質
植物性たんぱく質とは、小麦や大豆など植物から取れるたんぱく質のことです。なかでも、大豆は必須アミノ酸の量が多い食材のひとつになります。
消化吸収が少ないことでも知られており、満腹感を感じやすい食材です。過食を防止し生活習慣病や肥満の予防に役立つため、健康的に体重を減らしたい方は積極的に摂ると良いでしょう。
植物性たんぱく質もあるがおすすめできない
納豆や味噌、豆腐などの植物性たんぱく質を摂取するのはおすすめですが、ソイプロテインや豆乳、大豆バーガーなどから植物性たんぱく質を摂取する方法は、Choiceサプリではおすすめしてません。
なぜなら、発酵されていない大豆の「植物エストロゲン」が私たち自身の体内のエストロゲンに似ており、非常に危険であることが研究で示されているためです。また「ゴイトロゲン」は、甲状腺が十分なヨウ素を摂取するのを妨げることがわかっています。
大豆には、ミネラルの吸収を妨げる酵素阻害剤である「フィチン酸塩」も含まれています。例えば、米国産の大豆の95%がGMO(遺伝子組み換え生物)であるという事実は、多くの研究で非常に危険であることが証明されています。
大豆がGMO(遺伝子組み換え生物)ではなく、納豆や味噌などのように「発酵」されている場合、すべての「抗栄養素」が死滅するため安全であるだけでなく、たんぱく質が豊富なため健康な栄養素も摂取できるでしょう。
また、納豆などの発酵大豆はビタミンK2の供給源で、腸内に有益な細菌がたくさん含まれています。
もし納豆を購入する場合、ラベルを読み、日本産の「有機納豆」を探してみてください。
高たんぱく質のおすすめメニュー5選
たんぱく質を手軽に摂取できるおすすめの高たんぱく質メニューを紹介します。「鶏ハム」「サラダチキン」「カラフルなチーズ稲荷寿司」「ホエイお好み焼き」「かぼちゃのニョッキ」は主菜にしても良し、おやつにしても良しの料理です。
いずれも作り方は簡単なので、時間のあるときに是非作ってみてください。
鶏ハム
鶏ハムは、和食・中華・洋食など何にでも合うことが魅力な高たんぱく質メニューです。鶏胸肉を茹でるだけの簡単な料理でありながら、食欲旺盛な子供にとっても、十分なエネルギー源となります。
主菜だけでなく麺類やサラダにも使うことができるため、炭水化物だけのメニューにさっと加えることも可能です。柔らかい食感なのでお年寄りでも安心して食べることができます。
サラダチキン
スーパーだけでなくコンビニにも販売されており、手軽に手に入れることができる高たんぱく質な食材です。名前の通り、サラダに入れるのも良し、そのまま食べるのも良しの万能たんぱく質食品といえます。
低糖質のためカロリーを控えることができ、肥満などの生活習慣病を防ぐことに役立つでしょう。朝ごはんに取り入れるなど、簡単な置き換えから始めてみてください。
カラフルなチーズ稲荷寿司
酢飯に乳製品であるチーズを入れた稲荷寿司です。他にも、ほうれん草や卵、鮭などを入れてカラフルに彩ります。
チーズとお揚げが豊富なたんぱく質源になるでしょう。また、彩りも楽しめるため、食欲のないときでも「少しつまんでみようかな」という気分になること間違いなしです。
ホエイお好み焼き
ホエイプロテインを使ったお好み焼きもおすすめの高たんぱく質メニューのひとつになります。牛乳からできたホエイプロテインは、たんぱく質も豊富で小麦粉の代わりに使用できる優れものです。
お好み焼きを作る際には長芋を入れるとサクサクのふわふわになります。たんぱく質たっぷりのお好み焼きを是非作ってみてください。
かぼちゃのニョッキ
ジャガイモと小麦粉で作られたパスタのひとつであるニョッキを使った美味しいかぼちゃのパスタです。ニョッキを作る際には、小麦粉ではなくプロテインパウダーを使うのがポイントになります。
小麦粉と置き換えるだけなので、とても簡単です。手軽かつおしゃれな料理で、たんぱく質を補うことができます。
未来の新しいたんぱく質源とは
人口増加や環境破壊により、私たちが食するたんぱく質源のうち動物性たんぱく質が将来無くなってしまう可能性があります。
そのため、現在では植物性たんぱく質を使った代替肉、培養肉や未利用資源(昆虫)など、動物性たんぱく質を使用しない未来のたんぱく質源の開発が進められているのです。
地球に住む生命の一部として、将来のたんぱく質源にも目を向けていかなければなりません。
お肉だけどお肉じゃない「代替肉」
代替肉とは、植物性たんぱく質を利用して作ったお肉のことです。2024年現在では、スーパーなどでも手軽に購入できるほど広まっています。
動物性の成分を用いていないことから、代替肉はベジタリアンの人々にも親しまれている食材です。動物性たんぱく質ではありませんが、植物性のたんぱく質を摂ることができます。
人間が作り出す「培養肉」
培養肉とは、人間が動物の細胞を培養して作り出したお肉です。動物の細胞だけで作られるため、動物を殺す必要はありません。
地球環境を救う食材として現在でも積極的に研究が進められています。培養肉は、科学による新たなたんぱく質源といえるでしょう。
パウダーのたんぱく質源「ホエイプロテイン」
現在でも手に入れられるホエイプロテインは、未来のたんぱく質源としても十分に考えられる要素を持っています。ホエイプロテインは牛乳を分離しろ過処理して作られたものです。
廃棄される牛乳が多いという問題が持ち上がっている昨今、牛乳から作られるホエイプロテインには大きな期待が集まっています。Choiceで販売されているホエイプロテインもおすすめです。不足しているミネラルやビタミンも補えるでしょう。
日本人のたんぱく質不足を解消して健康的な生活を送ろう
本記事では、日本人のたんぱく質不足の実態とサルコペニア・虚弱のリスク、予防方法を解説しました。日々の食事で、自分の体に必要なたんぱく質を摂取できているか確認することは非常に大切です。
歳をとったときにサルコペニアになるかどうかは、今の過ごし方によって決まります。何かを食べる時はたんぱく質をはじめとする栄養を摂取する目的を持って食べましょう。
日本は長寿国とされているが、寝たきりでの長寿では意味がありません。健康的に長く生きるためにも不足しがちなたんぱく質を適切に摂取することが大切なのです。
参考文献: